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短歌をこころから楽しんだ季節の記録
かつてニューウェーブと呼ばれ、暴走と迷走を繰り返した日々を経て、しばらくは短歌に苦しめられてもいましたけれど、四十歳を過ぎた頃、ふたたび蜜月とでも言いましょうか、書くことが楽しくてしかたない季節がやって来ました。(あとがきより)
「ニューウェーブ短歌」を牽引した一人、荻原裕幸による、19年ぶりの第6歌集。
さまざまな境界線が滲み合い、交差する中で
あふれ出すのは不可逆的かつ永遠的な「いま」の抒情だ。
矛盾と異化を含んだ梅の花の心地良い香りに誘われて、
荻原裕幸は今日も現代短歌の〈夢〉をリリカルに完食する。
濱松哲朗
荻原さんの今までの歌集のなかでいちばんいいと思います。
平岡直子
【五首選】
わたくしの犬の部分がざわめいて春のそこかしこを噛みまくる
優先順位がたがひに二番であるやうな間柄にて梅を見にゆく
空が晴れても妻が晴れないひるさがり紫陽花も私もずぶ濡れで
たまに夢でつながる人の部屋に来てけふはしづかに秋茄子を煮る
蕪と無が似てゐることのかなしみももろとも煮えてゆく冬の音
http://www.kankanbou.com/books/tanka/gendai/0395