
言の葉の上を這ひずり回るとも一語さへ蝶に化けぬ今宵は
この本は、一見すると、きはめて形而下的な契機によつて成立したやうに見える。しかし、詩歌といふのは、さういふ形而下的な動機を超えて動くものだ。
作者は、それまで長く続けて来たいくつかの仕事を辞めた。そのためもあつて、詩や歌をつくる悦びを覚えるやうになつた。どうやらその流れが、この本の底のところで、ささやかな響きを立ててゐるやうに作者は思つてゐるのだが、錯覚であらうか。
(著者あとがきより)
http://www.kankanbou.com/books/tanka/gendai/0192kureteyukubahha