
ひだまりを汲む井戸がある匿つてくれたあなたのちひさな庭に
記憶そのもののような雨の匂い、
あったことのない祖母の盛りつけるおでん、
見終わった夢が眠っているような書棚――
魚村さんの〈裏庭〉で、
わたしたちは懐かしい、
未知の歌たちに出逢う。
カニエ ・ ナハ
【自選5首】
何処かとほく、は僕らになくて降りるとき土のにほひをくちびるはいふ
まだなにかをわすれたいのかゆりの木はからだをひらく五月の雨に
まなざしはこころをためす。銀の斧だつたかと訊く水辺のやうに
おろそかにしてたとおもふ雨がふればヴィニール傘をむだにふやして
ローソンのバックヤードでくちづけをおぼえる子供たちによろしく
http://www.kankanbou.com/books/tanka/gendai/0452