優雅で感傷的な自虐小説?繊細な含羞に裏打ちされた狂気?
これも文学なのだ、ではなく、これこそが文学なのだ、と敢て言おう。
佐川恭一は、令和日本文学の、黒光りに輝く希望の星である。
――――佐々木敦(ことばと編集長)
5編の妄想と諧謔によって綴られる佐川恭一ワールド全開の一冊。
妻と娘との三人家族のわたしは、職場でも家庭でも孤立していき、限られた小遣いの中でわずかな喜びを見出す日々。強靭な精神を持つ妻に太刀打ちできないわたしは家出することで抵抗するが ・・・「愛の様式」 苦手なドッジボールに誘われるまま参加したことをきっかけに、現実のぼくの心と体はどんどん乖離していく。十歳を目前にしたぼくはすべてを消し去ってしまおうと決意する ・・・「冷たい丘」 この世界はしらふで生きていられる場所じゃない。勝者しか存在を許されない会場で、ぼくたちは倒れるまで下手なダンスを踊り続けるしかない ・・・「舞踏会」など、「ことばと」掲載の表題作を含む5編を収録。
http://www.kankanbou.com/books/novel/0460