
川柳アンソロジー『はじめまして現代川柳』(小池正博編、2020年、書肆侃侃房)収録作家による待望の初句集!妖しい笑いと情感あふれる機知に満ちた、自在な248句。
紙風船うすずみいろの(来て)をいう
夜を一枚めくる二軒目
ある日来た痛み 初歩だよワトスン君
対岸のささやきvsつぶやき
年明ける首絞め【チョーク】を防御したままで
Re: がつづく奥に埋もれている遺体
毎度おなじみ主体交換でございます
団欒の欒に巣作りする燕
渦でしょうか楳図かずおでしょうか
くちびるは天地をむすぶ雲かしら
(本文より)
目次
みず
少年たちの九十九折
芽キャベツの乱
未明のパーツ
スクールデイズ
猿の星
句意を刈り取れ/レトリカを行く
世界の水平線
シニフィアン・シニフィエ
一銭一句物語
あとがき
「あとがき」より
本句集には、2009(平成21)年から2021(令和3)年までの248句を収録しています。この12年間、現代川柳・伝統川柳・社会性川柳・狂句的川柳・前句付・短句(十四字・七七とも呼ぶ)など、いろいろなスタイルを経験してきました。そればかりではありません。創作活動の半分は現代短歌に費やしてきました。だからこそ自分の作品はクロスオーバーなのだ、などと言えればかっこいいのですが、とてもそこまでは達していません。ただ、もしもいくらかの多様性と、それをやんわり統一している人格とを感じていただければ嬉しいです。
昨年発売されたアンソロジー『はじめまして現代川柳』(小池正博編著、書肆侃侃房)に掲載された川柳も、ほとんど収録しました。当初は、そこに入っていない170句~180句でいくつもりでした。しかし、よくよく考えてみると、この句集ではじめて私の川柳をご覧になる方もいるはず。であるならば、世間に発表できるレベルの作品はすべて入れておいたほうがいいかもしれない。そう思い直した経緯があります。
今回収録した各章の川柳は、初出の並べ方にはこだわらず、大部分を再構成しました。それによって、既知の飯島作品も新鮮な感覚で読んでいただけるのではないか、と考えたのです。もっとも、千句近いストックの中から248句に絞ったわけですから、元より初出どおりには並べられませんね。
収録句の中には、故石部明や故筒井祥文に句会で選ばれた川柳もあります。故人も含め、選者にこれまで採っていただいた作品が、歳月を経て、今この句集の一部分をなしている。同時的に存在している。これは何と不思議なことでしょうか。何と光栄なことでしょうか。なぜと言って、間接的にではありますが、少なくない他者がこの句集に関わってくださったことになるのですから。
(版元ドットコムより抜粋)