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田尻久子『猫はしっぽでしゃべる』(ナナロク社)

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挟み込み冊子「橙書店・田尻久子さんに寄せて」 【寄稿】伊藤比呂美(詩人)、川内倫子(写真家)、 坂口恭平(作家)、渡辺京二(思想史家・評論家) 熊本の〈小さくて不便な本屋〉橙書店。 店には日夜、地元の常連客をはじめ、 全国の本好きたち、 人気作家や編集者らが集まるという。 看板猫とともに日々店に立ち、 人と人、人と本とをつないできた店主による 本と猫と記憶にまつわる初めてのエッセイ集。 巻末に、本書でとりあげたお薦め本の書籍リスト付き。 お店というのは不思議な場所だ。旅人から相談を受けたことがある。お会計のときに、いきなり辛いことを思い出して泣き出した人もいる。見知らぬ人から頂きものをすることは、度々ある。あの日、あのとき、ありがとうございました。さっぱり思い出せないことのお礼を言われて恐縮する。その人たちの名前も連絡先も知らない。でも、彼らの時間をわずかだけ知っている。その時間は、たまに忘れ難いときがある。二度と会うことがなくとも、顔を思い出せなくとも、その時間の手触りは思い出せる。(本文より)

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