SOLD OUT
わたしはしかたなく/人間と恋愛をしていた
新たなる自己を発見し見つめてゆく暁方ミセイ。
夕暮れの光は私たちをゆらゆらとそこに佇ませる。
本詩集の詩を書いていた期間、ありとあらゆるものが存在することの価値について考えていました。したがってそれも反映されているかもしれません。だんだん精神の具合が悪くなってくると、まずは四六時中何かの悪い予感にとりつかれ、そのうち積極的に自分は悪しき人間だという証拠を探しはじめます。もっといい人間にならなければ、恥ずかしくない思考と行動をもつ者にならなければ、と思うのですが、一方で、それに激しく反発する自分が、わたしに詩を書かせていました。
著者あとがきより
花畑
あちらの岸にもまた
相似形の地獄が
いちめんいちめん展開し
救いのないアラベスクがどこまでも展開し
こちらの岸の怒りや悲しみと
相似形の地獄の花畑が
どこまでもどこまでも続いているらしい
そこを逃げ出す呪文はこう
思考で描くなにもかもは存在しない
陽光
浅い春のまぶしい陽射しと
雪解けの雫のたてる蒸気と
凍った椿のほどける濃い色
風に含まれるもうどうなってもいい冬との境の
いまここで血液と酸素を巡らせる感じ
そのすべても存在しないが
感じるのもまた本当だ
流れる水の一瞬をとどめられるのは想像だ
自由は
その地点でいつでも豊かな風を抱いている
永遠にとまり
永遠にうごき
そこに住むことができるなら
わたしにひとつの文字が刻まれる
詩集
2023/03/25発行
A5判変形(140x210) 並製
(七月堂HPより引用)