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『前川佐美雄歌集』
前川佐美雄/三枝昻之編
四六判、上製、368ページ
定価:本体2,400円+税
ISBN978-4-86385-589-2 C0092
装幀:六月
栞:石川美南、菅原百合絵、永井祐
生誕120年!
いますぐに君はこの街に放火せよその焔の何んとうつくしからむ (『植物祭』)
塚本邦雄、山中智恵子の師であり、「現代短歌の発端」として比類なき歌を紡いだ歌人・前川佐美雄。
代表歌集『植物祭』『大和』を完本で収録、前川佐美雄の短歌世界を見渡せる1600首。編者による詳細な解説、年譜を付す。
『葛原妙子歌集』(川野里子編)、『山中智恵子歌集』(水原紫苑編)に続く新編歌集シリーズの第3弾。
http://www.kankanbou.com/books/tanka/shinpen/0589
【目次】
『春の日』/『植物祭』(完本)/『白鳳』/『大和』(完本)/『天平雲』/『日本し美し』/『金剛』/『紅梅』/『積日』/『鳥取抄』/『捜神』/『松杉』/『白木黒木』/『天上紅葉』/解説(三枝昻之)/前川佐美雄年譜
【収録歌より】
いますぐに君はこの街に放火せよその焔の何んとうつくしからむ(『植物祭』)
春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ(『大和』)
春の夜にわが思ふなりわかき日のからくれなゐや悲しかりける(『大和』)
火の如くなりてわが行く枯野原二月の雲雀身ぬちに入れぬ(『捜神』)
「おつくう」は億劫(おくこふ)にして億年の意としいへればこころ安んず(『白木黒木』)
【著者プロフィール】
前川佐美雄(まえかわ・さみお)
1903(明治36)年奈良県忍海村に代々農林業を営む前川家長男として生まれる。1921年、「心の花」に入会、佐佐木信綱に師事。22年、上京し東洋大学東洋文学科に入学、「心の花」の新井洸、木下利玄、石榑茂から刺激を受け、同年9月の二科展で古賀春江の作品に感銘、関心をモダニズムに広げる。30年に歌集『植物祭』刊行、モダニズム短歌の代表的な存在となる。33年奈良に帰郷、翌年「日本歌人」創刊、モダニズムを大和の歴史風土に根づかせた独行的世界を確立。占領期には戦争歌人の一人として糾弾されたが、『捜神』の乱調含みの美意識が評価され、門下の塚本邦雄、前登志夫、山中智恵子等が活躍、島津忠夫が現代短歌の発端を『植物祭』と見るなど、現代短歌の源流とされる。迢空賞受賞『白木黒木』からの佐美雄の老いの歌は人生的な詠嘆を薄めた融通無碍の世界である。1970年に奈良を離れて神奈川県茅ヶ崎に移り、1990年87歳で死去。