SOLD OUT
文庫判 本文 96P|定価:900 円+税|初版 300 部
〈もしかしたら道がすごく混んでいるかも、急な寄り道をせざるを得なくなるかも、思い もよらない何かによって焦る可能性があるかも、と子連れの旅行によくある万が一のなに かに備え、早めに自宅を出発したのだが、想定外に道が空いていたり、起こるかもしれな かった予定外のことが全く起きなかったりで、ずっと早く着いてしまった〉
2023 年 1 月、沖縄に六日間の家族旅行に行ったときの日記をまとめたものです。
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記憶の転生
言葉が溢れている世界の中で、わたしはあまり言葉に触れたくない。疲れるからだ。しかし、図Yカニナ氏の著書は疲れない。ふと一文読んでしまうと、次の一行へ、次の一行へ、と思わず読み進めてしまう魔力がある。
面白くない文章は、読もうと思っても読めないものだが、面白い文章は、読もうと思わなくても読めてしまう。優れた書き手により、読書は能動と受動が入り混じった愉楽の境地へと昇格する。作家は言葉の魔術師と化し、日常の些細な一つ一つの出来事に突っ込みを入れていく。そこで読み手に湧き起こる小さな共感が、体のあらゆる細胞を刺激しながら、愉楽の読書体験へ誘うだろう。日常で忘れ去られる些細な記憶は、言葉やイメージの力で文章として転生し、あなたの中に入り込んで第二の人生を送るのだ。
読後には、日々の些細なことをもっと言葉で掘り起こして共有して共感し合い、「おもしろき こともなき世を おもしろく」生きていきたい、と思うのではないだろうか。言葉は、そうして人を幸せにするのだ。
稲葉俊郎(作家、軽井沢病院院長、山形ビエンナーレ芸術監督)
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【著者プロフィール】
図 Y カニナ(ずわいかにな)
1985 年生まれ。宮崎県出身。京都の大学を出て、大阪の企業に就職することが決まっていたが、嫌になって初日に辞 退。みうらじゅん氏の追っかけをするために上京。秋葉原でメイドとして働いた後、レコード会社で宣伝業務に従事。 2013 年 2 月、漫画を書きはじめる。「講談社プロジェクトアマテラス」にて「ねとらぼ賞」を受賞し、ニュースサイト 「ねとらぼ」 にて4コマ漫画「カニ天国」シリーズの連載を開始。2014 年夏には、ドミノパニックムービー 「KILLER DOMINO」を企画、監督。ほか、しりあがり寿 Presents「さるはげロックフェスティバル」に数回出演。 その後、出産を機に退社し、漫画家としての活動も休止。しばしのブランクを経て、文章を書きはじめたところ、思い のほか評判がよかったため、初めての著書『沖縄に六日間』を出版。現在、二児の母。長野県在住。