SOLD OUT
この歌集には、普通の人にはまず思いつかないような奇想が充ちている。
怖いからスルーしたい。でも、できない。怖いくせに、いや、怖いからこそ、立ち止まって正体を知りたくなる。その奥にとても大切なものが隠されているように感じるのだ。――穂村弘
奇想に充ちた短歌で「日経歌壇(穂村弘 選)」に100首以上掲載、年間の秀歌にも多数選出のスター歌人として知られる田中有芽子。2019年に刊行し話題を呼んだオンデマンド歌集に、新作「りからん」を加えた新装版。穂村弘による解説も収録。
〈収録短歌より〉
ガラス越し新生児らの歳を足すみんな合わせて56日
ぎっしりとセミの抜け殻詰め込んだ軽いトランク持って野を行く
奇数本入りのパックが並んでる鳥手羽先の奇数奇数奇数
「共用スペースでは必ず犬を抱くこと」買いに行かなきゃ、犬を。
あのアゲハ小さい頃から何回もおんなじやつに会ってるのかも
100年に一言喋る力持つテディ・ベアそっと抱けば「暑イ」と
すれ違い多き夫よ何回も帰ってくるが行くのを見ない
海と陸出会うはずない命たち一皿に盛ってシーフードサラダ
君たちは名誉レッサーパンダだよ雨の日の午後通知が届く
お母さんはあんたよりもっと殺してる巣に水を入れたりもした
【目次】
私は日本狼アレルギーかもしれないがもう分からない
【あ】行
【か】行
【さ】行
【た】行
【な】行
【は】行
【ま】行
【や】行
【ら】行
【わ】行
【を】のかわりに 解説 穂村弘
【ん】のかわりに あとがき
りからん
最後に
【著者プロフィール】
田中有芽子 (タナカ・ウメコ)
札幌生まれの埼玉育ち。東京在住。二〇〇九年より短歌を作り始め、歌人集団「かばんの会」に所属。二〇一〇年より日本経済新聞の歌壇に投稿、穂村弘選として一〇〇首以上掲載され、年間の秀歌にも多数選出。二〇一九年三月『BBレポート』、同年六月、オンデマンド版歌集『私は日本狼アレルギーかもしれないがもう分からない』刊行。
(左右社ホームページより引用)