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「彼は希望を育む術と地の果てまで絶望する術を同時に鍛えなければならなかった」
脱北者の青年ロ・ギワンの足跡を辿るなかで、失意と後悔から再生していく人びとの物語。
英語版・ロシア語版も刊行された話題作
映画原作のロングセラー、日本上陸
申東曄文学賞受賞作
「命がけで国境を越え、最愛の人を失い、生きるためだけに見知らぬ国へと流れ着いたここまでの道のり。それが何の意味もなかったことを受けいれなければならない、氷のように冷たい時間。
彼は、懐かしさだけで故郷を思い出す甘い時間は、自分には今後いっさい訪れないだろうと悟った。」
単身ブリュッセルに流れ着いた20歳の脱北者ロ・ギワン。希望を見いだせず、自分を否定する日々を送っていた放送作家の「わたし」は、雑誌で出会ったギワンの言葉がきっかけで、彼の足跡を辿る旅に出る。
オンライン配信映画、2024年公開!
「なにものにも置き換えることのできない感情は、一度も会ったことのない他者の人生を通じてよみがえることもある。ブリュッセルに来て、ギワンの供述書と日記を読み、彼が滞在した場所や歩いた街を辿っている間、ギワンはすでにわたしの人生に入り込んでいた。だからこそ、今度は彼にもわたしのことを、彼自身が介入しているわたしの人生を知ってもらおう。
ギワンがわたしの人生へと歩んできた距離と同じ分、わたしもまた彼に向かって歩んでいくべきなのだ。」
【目次】
日本の読者の皆様へ
ロ・ギワンに会った
原註
作家のことば
推薦のことば……キム・ヨンス
訳者あとがき
【著者、翻訳者プロフィール】
チョ・ヘジン (チョ ヘジン)(趙海珍/조해진) (著/文)
1976年、ソウル生まれ。
2004年、中編「女に道を訊く」(『天使たちの都市』に収載、呉華順訳、新泉社)で『文芸中央』新人文学賞を受賞し、作家デビュー。マイノリティや社会的弱者、社会から見捨てられた人びとなど、“他者”の心に思慮深い視線を寄せる作品を書き続けていることで“他者の作家”とも呼ばれ、幅広い読者の支持を得ている、現代韓国文学を代表する作家の一人。
本作『ロ・ギワンに会った』で申東曄文学賞、長編『かけがえのない心』(オ・ヨンア訳、亜紀書房)で大山文学賞、『完璧な生涯』で東仁文学賞、短編集『光の護衛』(金敬淑訳、彩流社)で白信愛文学賞、短編「散策者の幸福」で李孝石文学賞など、数々の文学賞を受賞。
浅田 絵美 (アサダ エミ) (翻訳)
浅田絵美(ASADA Emi)
1983年、広島県生まれ。
韓国学中央研究院の韓国学大学院にて人類学科修士課程卒業。
日本の放送局にてディレクターとして勤務後、韓国でラジオのパーソナリティや翻訳の仕事を始める。韓国文学翻訳院の翻訳アカデミー特別課程を修了。
訳書に、チョン・ヨンジュン『幽霊』(彩流社)。