《尹東柱に敬愛された詩人の決定版評伝。天才詩人の作品と生涯》
尹東柱(ユンドンジュ)などと並び、現代韓国で多くの支持を集め続ける詩人、白石(ペクソク)。
生涯にわたる詩・随筆とその作品世界の魅力を余すところなく伝え、波乱に満ちた生涯を緻密に再現した、韓国で最も定評あるロングセラー評伝。
1930年代、モダニズムの技法を取り入れつつも古語や方言を巧みに用い、植民地下にあっても人々の生活に息づく民族的伝統と心象の原風景を、美しい言葉遣いで詩文によみがえらせて一世を風靡した詩人、白石(ペクソク)。
南北分断後は北朝鮮の体制になじめず筆を折らざるをえなくなり、その消息は長らく不明のままとなった。
本書は、韓国を代表する抒情詩人である著者が、敬愛してやまない白石の生涯を丹念に追い、小説を読むように、また白石の作品世界を深く味わえるように再構成した、決定版といえる評伝である。詩のみならず、随筆や分断後の北朝鮮で書かれた作品を多く収録しているほか、同時代を生きた詩人・作家たちの足跡も辿ることができ、資料的価値も高い。
【目次】
日本語版に寄せて
まえがき:白石を書き写していた時間
◎プロローグ
帰郷
◎第一部 詩集『鹿』の誕生まで
平安北道定州郡葛山面益城洞/五山学校時代/素月と白石/青山学院に留学する/日本での文学修行/『朝鮮日報』との縁/光化門通りの三人組/詩人としての第一歩を踏み出す/百部限定の詩集『鹿』/『鹿』が文壇に投じた砲弾/統営、統営 ほか
◎第二部 咸興時代
咸興へ旅立つ/『鹿』に対する別の見方/白石の詩に影響を受けた詩人たち/咸興で出会った子夜/日中戦争の狭間で/僕とナターシャと白いロバ/崔貞煕と盧天命と毛允淑、そして鹿/優れた『女性』誌の編集者/画家の鄭玄雄 ほか
◎第三部 満州時代
満州へ旅立つ/倦怠と幻滅/測量も文書も嫌気が差し/白きかべがあって/鴨緑江が近い安東の税関で/雲隠れした詩人と詩 ほか
◎第四部 解放後
解放された平壌で/三十八度線を越えなかった理由/南新義州柳洞 朴時逢方/戦争と翻訳/童話詩の発見/児童文学論争の矢面に立たされる/生き残るために/赤い手紙をいただいて、館坪里の羊を育てる/平壌は何も変わっていなかった/南に送る手紙/こうして消えた名前/詩人の死 ほか
解説註
人名註
文献註
白石年譜
付録 白石詩抄
収録作品一覧
解説 評伝のかたちで再現した白石の生涯と文学……李東洵
訳者あとがき
【著者プロフィール】
アン・ドヒョン(安度昡) (アンドヒョン) (著/文)
1961年、韓国・醴泉(イェチョン)郡生まれ。1984年に『東亜日報』新春文芸に詩が入選し、詩壇デビュー。「詩と詩学若い詩人賞」「素月(ソウォル)詩文学賞」「露雀(ノジャク)文学賞」「白石(ペクソク)文学賞」など数々の文学賞を受賞し、韓国を代表する抒情詩人。『ソウルに向かう全琫準(チョンボンジュン)』『焚き火』『寄る辺なく気高くさみしい』『海辺の郵便局』など十一冊の詩集がある。創作活動は多岐にわたり、大人のための童話『鮭』、長編小説『ミナミバンドウイルカ』、エッセイ集『アン・ドヒョンの発見』など多数の作品を発表している。邦訳書に、『幸せのねむる川』(藤田優里子訳、青春出版社)、詩集『氷蟬』(韓成禮訳、書肆青樹社)、エッセイ集『小さく、低く、ゆっくりと』(韓成禮訳、書肆侃侃房)などがある。
現在、檀国(タングク)大学文芸創作科教授。
五十嵐 真希 (イガラシマキ) (翻訳)
東京生まれ。早稲田大学卒業。茨木のり子著『ハングルへの旅』に感銘を受けて韓国語を学び始める。訳書に、イ・ジャンウク『私たち皆のチョン・グィボ』(クオン)など。共訳に、野間秀樹・白永瑞編『韓国・朝鮮の美を読む』、野間秀樹編『韓国・朝鮮の知を読む』、金賢珠ほか編『朝鮮の女性(1392-1945)――身体、言語、心性』(以上、クオン)、パク・イングォン『銭の戦争』(竹書房)など。短歌結社「短歌人」会員。
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