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『パレスチナ/イスラエルの〈いま〉を知るための24章』(明石書店)

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2,200円

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昨今混迷化するパレスチナ情勢を受け、パレスチナに暮らしている人々や故郷を追われた人々の現状、イスラエル国内の世論等、一元的な対立構造ではない多様な視点からパレスチナ問題がわかる別冊エリア・スタディーズが誕生。どのようにガザを支援しているのか、パレスチナ国内のカルチャーや商業活動等、現地の日常も活写したパレスチナ理解の決定版。 目次 序章[鈴木啓之]  パレスチナ/イスラエル全景  パレスチナ難民の移動と現在の居住地 Ⅰ ガザ情勢から見るパレスチナ/イスラエル 第1章 ガザの風景――潮風が香る街道の町[鈴木啓之] 第2章 「封鎖」以前のガザ――うち続く反開発と人びとのスムード[藤屋リカ] 第3章 封鎖下の生活――若者の志を打ち砕く現実[手島正之] 第4章 国際社会とガザ――ガザの人びとと国際人道支援[吉田美紀] 第5章 ハマースとガザ――抵抗と統治のはざま〈山本健介] 第6章 イスラームと政治――その規範的観点と歴史的文脈[ハディ・ハーニ] 第7章 パレスチナと国際人道法――継続する占領と集団罰[島本奈央] 第8章 イスラエルと虐殺の記憶――過剰防衛の歴史社会的背景[鶴見太郎]  コラム1 レバノンの政治運動とパレスチナ[早川英明]  コラム2 イスラエル南部のキブツ[宇田川彩]  コラム3 イスラエル軍の徴兵制[澤口右樹] Ⅱ 日常のパレスチナ/イスラエル 第9章 東エルサレムと人びとの日常――支配の侵食に抗うこと[南部真喜子] 第10章 西エルサレムの人びとと生活――弦の橋が映し出す街の姿[屋山久美子] 第11章 イスラエル国籍のパレスチナ人――「1948年のアラブ人」の日常[雨雲] 第12章 ヨルダン川西岸での人びとの生活――入植地、分離壁、検問所の存在とその影響、生活する人たちの思い[福神遥] 第13章 テルアビブ――世俗的首都の「多様性」[宇田川彩] 第14章 終わりのみえない難民生活――レバノン在住のパレスチナ人[児玉恵美] 第15章 日常の中のナクバ/ナクバの中の日常――歴史の抹消にあらがう人びとの暮らし[金城美幸] 第16章 パレスチナをめぐるもうひとつの争点――LGBTQの権利について[保井啓志] 第17章 入植者植民地主義とパレスチナの解放――地中海からヨルダン川まで[今野泰三]  コラム4 教育と日常[飛田麻也香]  コラム5 「非日常」の抵抗――パレスチナと演劇[渡辺真帆]  コラム6 日常という抵抗、文学という抵抗[佐藤まな] Ⅲ 日本や世界との関わり 第18章 UNRWAの活動と日本――70年続いてきた支援[清田明宏・角幸康] 第19章 国際NGOとパレスチナ社会――人びとの暮らしに寄り添って[大澤みずほ] 第20章 ガザの商品を扱う――フェアトレードの試み[山田しらべ] 第21章 パレスチナ・ガザ地区での医療援助――国境なき医師団の活動を通して見た紛争地医療の課題[白根麻衣子] 第22章 国際協力NGOとアドボカシー活動――日本外交への提言[並木麻衣] 第23章 パレスチナ勤務の経験から――緊急人道支援から大規模産業復興プロジェクトまで[大久保武] 第24章 帝国主義とパレスチナ・ディアスポラ――大英帝国からアメリカ帝国へ[イヤース・サリーム]  コラム7 14歳のパレスチナ難民が日本に伝えたこと[新田朝子・石黒朝香]  コラム8 転換期にあるBDS運動 ICJ暫定措置命令と対イスラエル武器禁輸[役重善洋]  コラム9 『ガザ素顔の日常』上映と映画の力[関根健次]  パレスチナ/イスラエルを知るための参考資料 前書きなど 序章  過去最悪の人道危機がガザ地区で起きた。  2023年10月7日から、世界の耳目はガザ地区に向けられた。ガザ地区からパレスチナ人の武装戦闘員3000人近くがイスラエルに越境し、攻撃を行ったことが発端である。ガザ地区周辺のキブツなどに流入した戦闘員は、最終的にイスラエル軍やイスラエル警察によって多くが殺害されたが、この攻撃によってイスラエル市民およそ800人を含む1200人が殺害された。特にベエリやクファル・アザなど、ガザ地区に近いキブツは壊滅的な被害を受け、ヴィヴィアン・シルバー氏のように長年にわたって平和運動に参加してきた人物も命を落とした。また、人質として240人近くがガザ地区に連れ去られた。  イスラエルによるガザ地区への攻撃は初日から苛烈を極めた。空爆が続くなかで、ガザ住民の犠牲は過去に例を見ない規模になった。戦闘開始から20日ほどで、ガザ住民の死者は7000人を超えた。この攻撃がいかに苛烈なものであるのかは、過去の事例に照らしても明らかである。例えばイスラエルの人権団体ベツェレムは、2000年から2010年までの死者数について、イスラエルで1083人、パレスチナで6371人だったと記録している。激しい衝突となった2000年9月からのアル=アクサー・インティファーダと2008年12月から翌09年1月にかけて起きたガザ攻撃が含まれる時期である。わずか20日ばかりで、オスロ合意以降で最悪とも言える衝突を含む10年間の死者数を凌駕する状態になったことは、ことさら衝撃的だ。  (…中略…)  本書は、この過去最悪の人道危機が続くなかで編まれた。ただし、本書は2023年10月7日からの事態だけを論じるものではない。ガザ地区での戦闘に収斂した矛盾や社会的課題を理解するためには、中長期的な視座からの検討が不可欠だと考えたためである。また、戦闘のなかで失われた日常―ときに矛盾を含む日常―がどのようなものであったのか、改めて記録する試みでもある。したがって、本書の著者は、比較的最近になってパレスチナ/イスラエルを含む中東地域での留学や長期調査を行った研究者と、NGOをはじめとする実務家によって構成されている。『イスラエルを知るための62章【第2版】』(2018年)や『パレスチナを知るための60章』(2016年)とあわせ、本書がパレスチナ/イスラエルの「いま」を理解する手がかりになることを願っている。  第1部「ガザ情勢から見るパレスチナ/イスラエル」では、ガザ地区が置かれてきた歴史的・社会的文脈をたどる。特に封鎖下に置かれたガザ地区の状況と、それを生み出した背景を論じることが、この部の目的である。また第2部「日常のパレスチナ/イスラエル」では、人びとの生活に着目する。この部では、パレスチナ/イスラエルにおける日常生活を描きつつ、その「非日常性」を浮かび上がらせることが狙いである。最後に第3部「日本や世界との関わり」では、ガザ地区と日本や世界を取り結ぶさまざまな取り組みを重点的に論じる。国際NGO、国連機関、外交関係者まで、実践に重点を置いた章がこの部には含まれている。  (…後略…) 著者プロフィール 鈴木啓之(スズキ ヒロユキ) (編著) 東京大学中東地域研究センター・特任准教授。中東地域研究。著書に『蜂起〈インティファーダ〉――占領下のパレスチナ1967-1993』(東京大学出版会、2020年)、共編著に『パレスチナを知るための60章』(明石書店、2016年)、共訳書にラシード・ハーリディー『パレスチナ戦争――入植者植民地主義と抵抗の百年史』(法政大学出版局、2023年)。 児玉恵美 (コダマ エミ) (編著) 東京外国語大学総合国際学研究科博士後期課程。専門はレバノン地域研究、難民研究。レバノン内戦(1975-1990)をめぐる家族の記憶を、故郷観、祖先観に着目して研究している。著作に「レバノンのパレスチナ墓地における記憶継承――マージド・フサイン・アティーヤの記憶から」(『日本中東学会年報』37(1)、2021年)がある。

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