original
ゆうすげは君と見し花
その色に月が浮かびて地球を悲しむ
植物を愛し、亡き夫を慕い、戦火の絶えない地球に思いを馳せる。
人が誰かを支え、支えられて生きることは、こんなにも哀しく、
慈しみ深いことであろうか。作者はかなしみの底から歌いはじめた。
――桜川冴子
【収録歌より】
瑠璃色の凜々しき顔に胸開き湖水を進む鴨の矜持よ
待ちわびる患者の顔の浮かびきて夫の訪問診療に随(したが)う
老い人の心を支えるお笑いのテレビの中のはしゃぐ人たち
空の門ゆるみて雪のなだれ落つたじろがず立つ柊すが清(すが)し
満月を迎えるごとく仰ぎつつ月の利権の争い悲し
【著者プロフィール】
江森節子(えもり・せつこ)
一九四四年 山口県に生まれる。
一九六七年 九州大学薬学部卒業。
一九七八年より夫の内科クリニックの院内薬局で四十年余り、薬剤師として働く
二〇一八年より短歌を始める。大学の公開講座、NHKカルチャー、朝日カルチャーの短歌講座で桜川冴子に師事。
医療法人理事、九州学士会理事、九州大学薬学部薬友会評議員、様々なボランティア活動に勤しむなかで、子ども食堂と関わる。
ライオンズクラブ元会長。