第一章 ケネディ大統領はアボリジニに出会ったか――幻のブック・ラウンチ会場より
1 フィールドワークのオーラル・ヒストリー
2 グリンジ・カントリー
3 誰が歴史家なのか?
4 僕たちの歴史実践
5 ジミー・マンガヤリとの出会い
6 もうひとつの経験主義
第二章 歴史をメンテナンスする――歴史する身体と場所
1 歴史実践とは何か
2 歴史する身体と世界の歴史
(1)注意深くある身体
(2)歴史する身体
(3)世界のありよう
(4)ドリーミング①――世界の起源について
(5)ドリーミング②――世界の維持について
3 移動の知識学
(1)移動生活民とは
(2)家(house)と我が家(home)について
(3)ドリーミング③――空間移動の倫理学
(4)繫がりの網目について
(5)開かれて可変的な知識体系
4 グリンジ社会の時間性
5 グリンジ・カントリーの歴史実践
第三章 キャプテン・クックについて――ホブルス・ダナイヤリの植民地史分析
第四章 植民地主義の場所的倫理学――ジミー・マンガヤリの植民地史分析
1 時間と空間,歴史と場所
2 場所の倫理学
3 「正しい道を歩みなさい」
4 正しい道を「歩む」
5 キャプテン・クックはどの方角から来たか
6 倫理の世界地図
7 場所を志向する歴史
8 グリンジ・カントリーにおける方角の意義
9 白人(カリヤ)の法は,どこに由来するのか
第五章 ジャッキー・バンダマラ――白人の起源を検討する
1 オーストラリアにやってきた最初のイギリス人
2 ジャッキー・バンダマラは「猿」から進化した
3 ジャッキー・バンダマラの植民地主義
4 ジャッキー・バンダマラの生き方
5 すべての悪い思想はジャッキー・バンダマラに由来する
6 多元的な歴史時空へ……そして共有の可能性は?
7 白人(カリヤ)は猿から,アボリジニ(グンビン)はドリーミングから
8 北部海岸からの伝承
9 ヨーロッパ人の形成
10 方法としてのドリーミング
第六章 ミノのオーラル・ヒストリー――ピーター・リード著『幽霊の大地』より
第七章 歴史の限界とその向こう側の歴史――歴史の再魔術化へ
1 歴史の相対性について
2 グリンジが語る歴史物語り
3 「地方化された歴史」について
4 ポスト世俗的な歴史叙述
5 クロス・カルチュラライジング・ヒストリー
6 歴史経験への真摯さ
第八章 賛否両論・喧々諤々――絶賛から出版拒否まで
1 草稿もってグリンジ・カントリー再訪,二〇〇〇年七月
2 博士論文の査読報告(抄訳),二〇〇一年六月
(1)査読者1
(2)査読者2
(3)査読者3
3 『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙より,二〇〇一年一二月
4 某出版社からの査読報告(抄訳),二〇〇二年某月
(1)専門家A
(2)専門家B
5 ○○書店K氏からの電子メール(日本語),二〇〇三年四月
著者によるあとがき………保苅実
もうひとつのあとがき――幻ではないブック・ラウンチを………塩原良和
ミノ・ホカリとの対話………テッサ・モーリス=スズキ
開かれた歴史学へ向けて………清水 透
〈岩波現代文庫版解説〉危険な花びら――保苅実と〈信頼の歴史学〉………本橋哲也
英文目次
地図,写真,図リスト
オーストラリア先住民アボリジニ史略年表
事項索引
人名索引
著者研究業績
保苅 実 (ホカリ ミノル) (著/文)
保苅 実(ほかりみのる)
1971年生まれ.新潟大学教育学部附属小・中学校,新潟県立新潟高等学校,一橋大学経済学部卒.1996年一橋大学大学院経済学研究科修了.2001年オーストラリア国立大学歴史学博士号取得.1999年から2003年まで,オーストラリア国立大学太平洋・アジア研究所(人類学科,歴史学科),人文学研究所に客員研究員として,2002年からは日本学術振興会特別研究員として慶應義塾大学に所属.2004年5月,病気によりオーストラリア・メルボルンにて逝去.同年7月,オーストラリア国立大学にて豪州の先住民族研究者対象の保苅実記念奨学金が設立された.(詳細はhttps://sites.google.com/view/hokariminoru/)
研究領域:オーストラリア先住民族,少数民族,多文化主義,ポストコロニアル研究,サバルタン研究,オーラル・ヒストリー,「記憶と歴史」論,歴史人類学,エスニック・アイデンティティーなど.
(版元ドットコムより引用)