『フランケンシュタイン』はメアリ・シェリーが十代で執筆した代表作だが、人口に膾炙している怪物の視覚的イメージが先行しているからか、この物語が誕生した伝記的な背景は、この有名すぎる作品ほどは知られていない。
メアリ・シェリーの作家人生は、彼女の両親である急進派思想家のウィリアム・ゴドウィンとフェミニズムの先駆者と呼ばれるメアリ・ウルストンクラフトの出会いから宿命づけられていたといえる。
本書で綴られるメアリ・シェリーの伝記的な情報は、『フランケンシュタイン』の思想のバックボーンと彼女が生み出したほかの小説や旅行記とどのようなつながりがあるかを理解するうえで、不可欠なものである。
メアリが実人生で体験する苦しみ――産褥熱による母の死、流産、夫パーシー・シェリーの死、生き残った一人息子をめぐる義父との協議など――と『フランケンシュタイン』以降のメアリ・シェリーの思想と行動も瑞々しい筆致で描かれている。
女性作家として、あるいはシングルマザーとして直面した問題意識がいかに形成され、作品として結実したか、余すことなく論じた記念碑的名著! 北村紗衣さん推薦!
目次
謝辞
第1章 遺産
第2章 ゴシックの叛逆
第3章 『フランケンシュタイン』
第4章 初期の女性の語り手──『フランス、スイス、ドイツ、オランダの一地域をめぐる六週間の旅行記』、『マチルダ』(一八一七~一八二一年)
第5章 『ヴァルパーガ』、『最後のひとり』、『パーキン・ウォーベックの運命』、そして新たな『フランケンシュタイン』(一八二一~一八三一年)
第6章 最後の仕事、一八三五~一八四四年
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索引
著者プロフィール
シャーロット・ゴードン (シャーロット ゴードン) (著/文)
Charlotte Gordon
1962年、米ミズーリ州セントルイス生まれ。米ハーヴァード大学卒、ボストン大学Ph.D。現在、米エンディコット大学栄誉教授、作家でもある。本訳書以外の主な著作に、Mistress Bradstreet: The Untold Life of America's FirstPoet (New York: Little, Brown and Company, 2005)、The Woman Who Named God: Abraham's Dilemma andthe Birth of Three Faiths (Little, Brown and Company,2009)、Romantic Outlaws: The Extraordinary Lives ofMary Wollstonecraft and Mary Shelley (New York:Random House, 2015. 全米批評家協会賞[ノンフィクション部門]受賞) などがある。
小川 公代 (オガワ キミヨ) (翻訳)
1972年生まれ。ケンブリッジ大学政治社会学部卒、大阪大学文学部修士課程修了、グラスゴー大学文学部博士課程修了(Ph.D)。現在、上智大学外国語学部英語学科教授。専門は、ロマン主義文学および医学史。主な著書に、『ゴシックと身体──想像力と解放の英文学』(松柏社、2024年)、『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版、2023年)、『ケアの倫理とエンパワメント』(講談社、2021年)、訳書に、C・ジョーンズ著『エアスイミング』(幻戯書房、2018年)、S・L・ギルマン著『肥満男子の身体表象─アウグスティヌスからベーブ・ルースまで』(共訳、法政大学出版局、2020年)など多数ある。