クレオール思想を代表する思想家、文学者の大著。その思想のエッセンスを伝える代表作の完訳。20年余の訳業を経て、待望の刊行成る!
カリブ海のフランス海外県・マルチニックにあって、その歴史・社会構造・言語・人々の心性のありようを、アンティル(カリブ海諸国)、とくにマルチニックに関わる厖大な言説を収集・分析しつつ明らかにし、フランスへの依存を逃れ、主体的な民衆による自立を訴求する。全篇を覆う危機意識、はるかに展望される独立への眼差し。多様なジャンルで著述活動を行なってきたグリッサンの結節点であり、その思想のエッセンスがあますところなく示された、最大にして最重要作。
著者プロフィール
エドゥアール・グリッサン (エドゥアールグリッサン) (著/文)
エドゥアール・グリッサン
1928年~2011年。ともにマルチニック出身の、エメ・セゼール、フランツ・ファノンらと並ぶ20世紀カリブ海思想の牽引者。〈関係〉の詩学、〈全─世界〉の思想と呼ばれる独自の思想を深化させ、世界的に大きな影響を与えた。小説家・詩人でもあり、小説『レザルド川』(恒川邦夫訳、現代企画室)、『第四世紀』(管啓次郎訳、インスクリプト)、『憤死』(星埜守之訳、水声社)、『奴隷監督の小屋』(中村隆之訳『痕跡』、水声社)、『マホガニー─私の最期の時』(塚本昌則訳、水声社)、評論『〈関係〉の詩学』(管啓次郎訳、インスクリプト)、『全─世界論』(恒川邦夫訳、みすず書房)、『フォークナー、ミシシッピ』(中村隆之訳、インスクリプト)、『多様なるものの詩学序説』(小野正嗣訳、以文社)、『ラマンタンの入江』(立花英裕・工藤晋・廣田郷士訳、水声社)、政治声明『マニフェスト─政治の詩学』(パトリック・シャモワゾーとの共著。中村隆之訳、以文社)など、主要な著作はほぼ既訳がある。本書は唯一残された主著『カリブ海序説』の完訳である。
星埜守之 (ホシノモリユキ) (翻訳)
東京大学名誉教授.20世紀フランス文学,フランス語圏文学,シュルレアリスム研究.著書に,『ジャン=ピエール・デュプレー―黒い太陽』(水声社),『文化解体の想像力─シュルレアリスムと人類学的思考の近代』(共著,人文書院),『シュルレアリスムの射程─言語・無意識・複数性』(共著,せりか書房)他.訳書に,エドゥアール・グリッサン『憤死』(水声社),パトリック・シャモワゾー『テキサコ』(平凡社.渋沢クローデル賞フランス大使館エールフランス特別賞),アンドレイ・マキーヌ『フランスの遺言書』(日仏翻訳文学賞),『ある人生の音楽』(いずれも水声社),ミシェル・ウエルベック『H・P・ラヴクラフト─世界と人生に抗って』(国書刊行会),ジョナサン・リテル『慈しみの女神たち』(上下.共訳,集英社.日本翻訳出版文化賞),ジェイムズ・クリフォード『リターンズ─二十一世紀に先住民になること』(みすず書房),『文化の窮状』(共訳),『人類学の周縁から―対談集』(いずれも人文書院),アンドレ・ブルトン『魔術的芸術』(共訳,河出書房新社)他.
塚本昌則 (ツカモトマサノリ) (翻訳)
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授.近現代フランス文学,ヴァレリー研究.著書に『写真文学論─見えるものと見えないもの』(東京大学出版会),『目覚めたまま見る夢─20世紀フランス文学序説』(岩波書店),『フランス文学講義─言葉とイメージをめぐる12章』(中公新書),『ヴァレリーにおける詩と芸術』(共編著,水声社),『写真と文学』(編著,平凡社)他.訳書に,エドゥアール・グリッサン『マホガニー─私の最期の時』(水声社),パトリック・シャモワゾー『カリブ海偽典(最期の身ぶりによる聖書的物語)』(紀伊國屋書店.日本翻訳文化賞),ラファエル・コンフィアン『コーヒーの水』(紀伊國屋書店.渋沢クローデル賞ルイ・ヴィトン特別賞,日仏翻訳文学賞),ポール・ヴァレリー『ドガ ダンス デッサン』(岩波文庫),『レオナルド・ダ・ヴィンチ論』(ちくま学芸文庫),『ヴァレリー集成Ⅱ 〈夢〉の幾何学』(筑摩書房),ロラン・バルト『記号学への夢─1958─1964』(ロラン・バルト著作集4.みすず書房)他。
中村隆之 (ナカムラタカユキ) (翻訳)
早稲田大学法学学術院教授.フランス語を主言語とする環大西洋文学,広域アフリカ文化研究,批評,翻訳.著書に,『エドゥアール・グリッサン─〈全─世界〉のヴィジョン』(岩波書店),『環大西洋政治詩学─二〇世紀ブラック・カルチャーの水脈』『カリブ─世界論─植民地主義に抗う複数の場所と歴史』(いずれも人文書院),『第二世界のカルトグラフィ』(共和国),『野蛮の言説─差別と排除の精神史』(春陽堂書店),『魂の形式 コレット・マニー論』(カンパニー社)他.訳書に,エドゥアール・グリッサン『マニフェスト─政治の詩学』(パトリック・シャモワゾーとの共著.以文社),『痕跡』(水声社),『フォークナー,ミシシッピ』(インスクリプト),アラン・マバンク『アフリカ文学講義─植民地文学から世界─文学へ 』(共訳,みすず書房),『黒人法典─フランス黒人奴隷制の法的虚無』(共訳,明石書店),『ダヴィッド・ジョップ詩集』(編訳,夜光社)他。