
SOLD OUT
「君が所帯を持ったことも、子供が生れたことも、風の便りに聞きました」と、私信のような、青春を回顧する文章にはじまる、ちいさな随筆集。作家・小山清(1911-1965)は、師である太宰治に愛されながら、生前に発表された単行本はたった五冊。寡作の作家でした。晩年は、病から失語病になり、ほとんど作品を書かないまま、53歳で亡くなっています。若いうちに肉体労働に従事し、市井の人々との交流のなかに、作品テーマを確立してきました。
こちらは、小山清の随筆集です。友人、働くこと、娘のことなど、五つのテーマに絞り、生前に発表されたすべての随筆のなかから十篇を精選。露天で買った矢車草を、コップに挿してみる。魅力的な性格から紡がれた文章は、静謐な印象を与えながら、心に訴えるものがある。こうも味わい深い随筆は、繰り返しなぞって読みたい。
高橋和枝さんの絵が、五枚挟み込まれ、いずれも糊で貼り付けされています。この丁寧な仕事は、ぜひお求めになって、手元でお確かめください。編集・発行は、作家の知名度などに関係なく、文章として美しいものを本として生み出し続ける「夏葉社」より。とても「らしい」一冊だと思います。
(恵文社公式サイトより引用)