
カンボジア初の建築家ヴァン・モリヴァン。
独立まもないその国で、主要な国家プロジェクトの数多くを手がけ、建築の近代化と脱植民地化に向き合った。内戦が始まると、スイスへ亡命しポル・ポトによる大虐殺から逃れ、祖国帰還後は戦後復興とアンコール遺跡の世界遺産登録に貢献した。
激動の時代を生きたひとりの知られざる建築家の生涯から、近現代を通貫する建築のグローバル・ヒストリーが見えてくる。
著者の10年にわたる研究の集大成。
【目次】
第Ⅰ章 カンボジア人建築家の誕生 一九二六-一九五六
1 仏領カンボジアの建築状況
2 エコール・デ・ボザールで建築を学ぶ
3 パリのクメール人脈
4 カンボジアへの帰国
第Ⅱ章 ナショナル・アイデンティティの表現 一九五六-一九六四
1 新しい国家を表現する
2 屋根に表れる伝統
3 アンコールの原理と空間
4 近代建築をクメール化する
第Ⅲ章 カンボジアに根ざす建築 一九六四-一九七一
1 カンボジアの住まいをデザインする
2 熱帯気候への適応
3 現地調達のデザイン
第Ⅳ章 ポストコロニアルの人的ネットワーク
1 公共事業省時代の設計体制
2 国連開発計画と大林組
3 キャビネ・ヴァン・モリヴァンの仲間たち
4 王立芸術大学と建築教育
5 建築の脱植民地化
第V章 内戦、亡命、再建 一九七一-二〇一七
1 ヴァン・モリヴァンの亡命
2 内戦期の活動
3 カンボジア再建
4 最後のメッセージ
著者プロフィール
岩元真明 (イワモトマサアキ) (著/文)
岩元真明
建築家、九州大学大学院芸術工学研究院准教授、博士(工学)
1982年東京都生まれ
2005年東京大学工学部建築学科卒業
2006–07年シュトゥットガルト大学軽量構造デザイン研究所(ILEK)学術研究員
2008年東京大学大学院修士課程修了
2008–11年難波和彦・界工作舎スタッフ
2011–15年ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツ パートナー
2015–16年首都大学東京特任助教
2015年– ICADA共同主宰
2025年– 合同会社岩元設計室主宰
四六判 336ページ
定価 3,000円+税
ISBN978-4-910032-11-5